さてさて、今日は奈良県天理市にある「道の駅 歴史芸術文化村」へ。
ここは今年2022年3月21日にオープンした新しい道の駅。
奈良県が総事業費100億円を投じた本気の道の駅なのである。
ここの目玉は国内で唯一、仏像等彫刻、絵画・書跡等、建造物、考古遺物の修復現場がガラス越しに見学ができるということ。
しかも無料で・・・
そして、学芸員による説明ツアーも無料で行われており、今日はそれに参加をしてきた。
写真撮影が許されたのは建造物、考古遺物の修復現場だけなんだけど、文化財の修復の花形といえば仏像等彫刻や絵画の修復。
残念ながらそのエリアの撮影は禁止。
しかし学芸員の熱量たっぷりの説明が大変面白く、勉強になったので紹介したい。
ツアーは午後2時30分からスタートで定員は10名ほど。
午後13時に受付開始なので13時過ぎに受付を済ませて、道の駅で時間を潰す。
で、いよいよツアースタート。
まずは地下にある絵画・書跡等を修復するエリアへ。
一般観覧者では入れない部屋に案内され、ほほんこんな観覧もあったのかと・・・
ここ奈良県歴史芸術文化村では国宝級のものを修復するのではなく、奈良県指定文化財の修復が主なのだとかで、現在は當麻寺の江戸時代に模写された當麻曼荼羅の修復が行われている。
修復技術の継承も重要なのだが、修復に使用する伝統和紙の継承にも警笛が・・・
曼荼羅や掛け軸などの絵画・書跡には何層もの裏紙が使用されており、修復する際には昔から伝承されている手すきの宇陀紙や美栖紙を使用するのだが、その和紙を生産する技術も継承が危ぶまれているそうな。
現在、奈良県吉野で古来の手漉き和紙を生産しているのは2軒のみだと聞いた。
奈良県吉野は「壬申の乱で吉野で兵を挙げた大海人皇子(後の天武天皇)が国栖(くず)の里人に紙漉きと養蚕を教えたのが始まりである」らしい。
そんな1000年以上もの歴史がある極上の和紙は海を渡りアメリカのボストン美術館やイギリスの大英博物館でも最高峰の紙として使用されているそうな。
文化財の修復に関する副資材の伝統継承とは目からうろこであった。
また、この絵画・書跡の修復を担当しているのが株式会社文化財保存という会社。
へぇ~文化財研究機関とかではなく株式会社なんだ。
四天王寺を建立した日本最古の企業、金剛組みたいなものかなぁ。
なんて思って検索をしたらわりと新しい会社なので意外だった。
過去の修復の間違いを正すか、あくまでも現状の間違ったまま修復するか。
続いて仏像等彫刻修復工房へ。
現在、奈良県大和郡山市にある光堂寺の四天王寺立像の修復をしているという。
が、この四天王寺立像、体に腕をつけるためのホゾがあるのだが、体側の凹のホゾは四角で上から腕を差しおろす形式なのだが、腕側は丸い凸型で、四天王像のどの像にでも差し込むことが可能な形式なのだとか・・・
そんな曖昧な作りはしないだろうという考察から、それぞれの四天王像にぴったり合う腕があるはずという。
要するに現状の四天王像の腕には過去の修復で間違った腕がつけられた可能性があるという。
信仰の対象という観点では正しい腕に戻すというのが正解なのだと思うのだが、文化財の継承という意味では、過去の過ちも含めて文化の検証となる。
この問題は奈良県文化財保存課にて検討がなされるとのこと。
ほほん、どこまで修復するかのボーダーラインがいろいろあるんだな。
修復作業ですら時間がかかるのに、そのような判断まで議論をするならそりゃ大変な作業だわな。
また建造物修復工房では宮大工が修復作業を行っており、その宮大工は奈良県の職員として公務員なのだとか。
全国でも宮大工が公務員として働いているのは珍しい。
ここ歴史芸術文化村ではあくまで奈良県指定の文化財のみなのだが、奈良県の文化財は数多く、国宝指定ではなくても十分に歴史文化的が価値が高い。
奈良県指定の文化財だからと言って国宝以下の価値かというと他府県では十分に貴重な文化財である。
奈良という文化財が豊富な地だけにあまり全国的に重要視されてないだけで、奈良県指定の文化財はこの国の歴史を紐解くうえで重要な文化財であるという学芸員の熱量がとてもよかった。
事実、40分のツアーであったが、結局時間を押して1時間ほどの説明を受けたのであった。
いや~ほんと勉強になったし、めちゃめちゃ詳しいなぁという情報量、そして何よりもそのような歴史文化を後世に継承しようという熱意のある説明に感動したのでありましたとさ。
ということで今日はこれまで。
ではでは。