映画のタイトルが「湯道」なのでお作法の話かと思われるかも知れないが、家族だから、家族ゆえに、家族なんだという家族をテーマにした物語が散りばめられている娯楽映画である。
下町の銭湯が舞台で、実家の銭湯を継ごうとする弟、濱田岳と実家の銭湯をたたみ、マンションにして家賃収入を得ようとする兄、生田斗真。
仲の悪い兄弟の間でその関係を取り持つのが、銭湯で住み込みのアルバイトとして働く今どき珍しい銭湯愛に満ちた橋本環奈。
実家の様々な場所に残された父親の銭湯に対する思い、家族に対する思いに気付く度に、本当にこの銭湯を無くしていいものかと考え始める兄、生田斗真に対し、弟である濱田岳は将来先細りしていくお客という現実に目を向け、生活のために銭湯をたたむことを決心する。
兄弟二人の心は銭湯を引き継いだ当初とは真逆になっていくものの最後には兄弟納得して一つの結論に達するという家族をテーマとした物語。
話の本筋は兄弟の銭湯を残すか残さないか問題なんだが、その銭湯に通う常連達の家族に関するエピソードも散りばめられている。
決して重たい話ではなく、どこにでもあるライトでコミカルなエピソードなんだが、どこにでもある話だけに、自分事として家族の大切さ、家族ゆえに当たり前になっている日ごろ気付かないありがたさ、親の子に対する無償の愛などが心に刺さり、エピソードごとに涙腺が緩む。
笹野高史、吉行和子が演じる老夫婦は2日ごとに夫婦一緒にこの銭湯に通っていた。
その度に風呂から上がる時間でもめていたのだが・・・
ある日一人で銭湯を訪れた笹野高史。
番台に座っている生田斗真が「今日は奥さんは?」と尋ねると・・・
「三日前がお通夜だったんです。」と笹野高史。
家にいると独りぼっちでかあさんがいないことを実感するのだそう。
「この銭湯に来るとね、男湯ではいつも独りぼっちだったでしょ。でも壁の向こうの女湯にかあさんがいるような気がするんです。」
「昔、かあさんといっしょに巡った温泉を一人で巡ってみようと思っているんです。女々しいですかね。」
そして昔、夫婦で訪れた温泉の湯けむりの中にかあさんの面影を見る笹野高史。
なんか男ってこうだよなぁって思う。
家内がいるときは気丈に振る舞っているが、家内がいなくなると、こうも未練が残るもんなんだな。
湯道という湯の道場やお家元なども登場するが、それはこの映画をコミカルにする一つのエッセンスでしかなく、銭湯を通じて人と人の繋がりが生まれ、その人の人生に関心を持つきっかけとなる。
そんなことがテーマになっている泣いて笑える娯楽映画でしたとさ。
そして子供の頃、父親とよく行った町の銭湯ではこんな風習や習慣があったなぁと懐かしさがこみ上げる映画でもありましたとさ。
ではでは。