さてさて、今日は奈良県大和高田市にある激渋銭湯スポット「中央温泉」へ。
JR和歌山線「高田」駅西口より徒歩5分の場所にあり、駅前の商店街を外れ、本郷通りと呼ばれる風情ある住宅地の中にひときわ歴史を感じる建物がある。
それが中央温泉だ。
この辺りは高田本郷と呼ばれ、江戸時代には市場町として賑わった。
今でもその歴史が垣間見れる町並みで、商店街の周りをブラブラしているとひょんな場所で仏具店や呉服店、昭和感のある金物屋などに出くわす。
さて、江戸時代にたいそう賑わった高田本郷の中心にある中央温泉。
高田本郷の中央にあったから中央温泉なのか。
その名付けの由来は分からないが、「千鳥破風(ちどりはふ)」の立派な屋根の装飾から想像するに、その昔はこの地域の生活の中心的存在としてたいそう繁盛したに違いない。
渋い外観にポップなのれんが不釣り合いなのだが、それがまたのれんの奥にはどんな世界が待っているのだろうと逆に興味がそそられる。
営業時間は
午後1時~午後5時30分。
銭湯なのに夜に営業をしていないのは珍しい。
定休日は
五十日(ごとうび)。
五十日(ごとうび)って今どき分かるかな。
ようするに毎月5日、10日、15日、20日、25日、30日のように5と10の付く日のこと。
のれんをくぐると下駄箱。
男湯、女湯の木製の引き戸があり、その中央の高い位置に番台用の小窓があるのが分かる。
写真では見切れているが、傘用の細長いロッカーも現役で残っていた。
こちらが脱衣所。
玄関の男湯の木製の引き戸を開けるとご主人がおり、入浴料を払う。
ご主人は基本、男湯で接客をしているのだろう。
漢数字で書かれたロッカーがまた歴史を感じる。
木の経年変化した色合いなどもまたノスタルジックで渋い。
令和の時代にまでよくも残してくれていたもんだ。
しばらく脱衣所の佇まいに酔いしれていると・・・
ボーン!ボーン!と懐かしい振り子時計の太い音色。
どこから?
と探してみると番台の真上に今も現役で令和の時間を刻んでいた。
時計には「SEIKOSHA」と書かれている。
精工舎(せいこうしゃ)とは服部時計店(現・セイコーグループ株式会社)の製造・開発部門として設立された会社群が昔に名乗っていた名前である。
一体この時計はいつ製造された時計なのだろう。
この体重計といい、マッサージ機といい、まさに私が子供のころに銭湯にあったもの。
半世紀も前の代物が未だに残っていることに驚きだが、あの頃の銭湯の光景がそのまま今、目の前に広がっているのが奇跡のよう。
あのポップなのれんをくぐった時から私は別次元の世界に迷い込んだのか。
そう思えるほど、視覚、聴覚、臭覚から現実離れした空間。
奈良の銭湯の入浴料金は440円。
公衆浴場の入浴料金は各自治体で統制されており奈良では440円なんですね。
大阪だと490円。
ちなみに全国で一番安い入浴料は佐賀県の280円。
そして、佐賀県の公衆浴場はもう1軒しかないそう。
奈良県の公衆浴場の数は19軒。
これからさらに少なくなっていくのだろう。
ではいざ、浴場へと。
浴場のレイアウトは至ってシンプル。
中央に大、小2つの湯舟。
湯舟の左側にはシャワーとカラン。
湯舟の奥はカランのみ。
カランが取り付けられている位置がまた独特。
一般的な銭湯には湯桶を置く台があり、その上にカランがあったりすんだけど。
中央温泉は床に直に湯桶を置いて、カランで湯を入れるという構造。
かなりカランの位置がかなり低いと感じた。
レトロなタイル張りの浴槽も今となっては貴重な存在。
湯舟に入りやすいように湯舟の周りに段を設けている銭湯が多いが、ここはその段もなく、かなり昔の造りをそのまま継承しているように感じる。
浴場の床も修繕する度にタイルの柄が変わっているのだろう。
そこがまた独特の味わいとなっている。
この銭湯の創業年は不明だが、壁のタイル絵は昭和6年のものだそう。
やはりタイルの浴槽は個性が出てあっていいもんだわ。
ところどころ補修がされているのも味というもんだ。
多少補修の後が目立つ場所があるものの、そこがまた歴史を感じる要素だったりする。
なにより浴場全体から感じる昭和の佇まいがいい。
細かな修繕を重ねてきたからこそ、当時のオリジナルの要素が損なわれることなく今に残っているのだろうな。
自宅から車で約1時間ほどの場所なんですが、なんだかすごい遠くの地方まで旅行に来たような。
そんな錯覚をする中央温泉でしたとさ。
ではでは。