2018年8月20日に発売された本。
元はというと1937年に発売された本を再刊したもの。
これがめっぽう面白かった。
昭和初期、飛騨・乗鞍・上高地周辺の奥山にある様々な寒村で体験したエピソードが短編としてまとめられているのだが、今では想像ができない当時の山稼ぎ人の暮らしぶりや、炭焼き小屋の山娘の生活、恋愛事情などを筆者の観察力と想像力で面白い物語に仕立てられている。
起承転結の巧みさもさることながら、面白いのは奥山の当時の習慣や風習なのである。
村の娘は労働力として現金獲得のために売られる。
そして、こともあろうに売った娘を隠れて連れ帰し、またまた別の労働力として売ったり、町から若い男性が訪れたとなるとたちまち恋に落ち、体を求めてくる山娘達だったり、税務署に見つからずに密造酒を造り続けるにはどうしたらいいかと村人達が集まって知恵を出し合ったり、都会病と言われる肺病が奥山にまで入ってきた話など、今では考えられない生と性というシンプルな欲望のみが関心事でしかない寒村の原始的な文化、奇習を知ることが出来る良書。
また、上高地登山ルートが開拓されるとたちまち人気スポットとなり、大きな資本が投入される。そうなる事で金儲けの邪魔者として何十年と上高地の登山ルートを開拓して来た上高地の主であった常さんが山を追われるエピソードなど昭和初期の山文化なども知ることが出来る。
麦や米など食べれない奥山の寒村の暮らしぶり。
日本が発展する昭和初期の奥山生活の貴重な資料なのだと思う。
いやいやに凄い本だった。
よくまぁこの本に出合えたものだ。