少年と犬 (文春文庫)馳 星周 著 読了。
書店に行くといつも目立つ場所に平積されてあった本。
フィクションは読まないからとスルーをしていた本である。
「涙がとまらなくなる」って嘘つけ!などと心の中でつぶやきまくっていた。
映画化になると聞いた。
流行りもんだねと心の中でつぶやいていた。
今時には珍しい「少年と犬」というシンプルなタイトルがなんだか古典っぽくて好きだった。
表紙の絵もどこか昭和臭があって好きだった。
でもフィクションは読まないから・・・
といつもいつもスルーをしていた。
昨日、本屋で大量に本を購入した。
レジで並ぶのに時間がかかった。
レジ待ち時間に見るでもなく目の前にある本が並ぶ棚を眺める風なしぐさをする。
レジ前の棚には「少年と犬」
またお前かよ。
私は手に大量のノンフィクション本を抱えていた。
まぁこれだけの数を買うんなら、財布の中身の大打撃は文庫本1冊程度どうにでもって感じだ。
で、私は「少年と犬」を手に取りレジを待つ。
昨日買ってもう読了。
そういう本だった。
泣きはしなかったが引き込まれた。
途中から展開が予想できたが、展開などどうでもよかった。
ただ、登場する1匹の優れた犬との旅を続けたかった。
それだけで本を読み進めた。
小説としての建付けもよくできているがそれもひとつの評論に過ぎない。
なんらセリフのない犬によくもこう感情移入できるもんだ。
その点でよくできた小説だなと思う。
私事だが昨年、飼っていたダックスがなくなった。
16年の付き合いだった。
さらに前の年には飼っていたグレイハウンドがなくった。
この2年で2匹の愛犬を失ったわけだ。
この小説に出てくる犬は優れすぎて比べものにはならないが、犬には不思議な能力がたしかにあり、我が愛犬2匹も家族の空気を察知するすべを持っていたように思う。
犬を飼った経験のない人がこの小説を読んでどのように思うかは想像できないが、もしこの小説を読んで、犬を飼いたいと思う人がいたならこの犬はフィクションだからと犬を飼う事をあきらめさせるだろう。
「涙がとまらなくなる」とか、「感動作」とか帯に書くから安っぽく見えるんだろうな。
書かない方がいいよ。そこはこの小説の本質ではないだろうし。
そもそもそんなキャッチコピーをつけるから、「嘘つけ!」って私がなかなか手に取らなったわけだし。
だからキャッチに惑わされないで、犬の旅がすごく斬新な形で描かれてるから。
子供の頃「炎の犬」というドラマがあって、犬の帰巣本能って感動するなぁと思っていたのだが、この小説はそれとは違い、よく思いついたなぁという内容であった。
読めば分かる。
ぜひ読んでほしい。
でも、決してその勢いでワンちゃんを飼ったらだめだからね。